誰にでも使えるデザインなんて無理

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ユニバーサルデザインに係わり始めたころ、必ず訊かれることがありました。

「誰にでも使えるデザインというけれど、どう考えても理想であって実際は無理なのではないか。結局、個別対応のバリアフリーに落ち着くのではないか。」

言いたいことはわかりますし、実際その通りだと思います。こう書いてしまうと身も蓋もありませんが、ここには大きな誤解があります。

ユニバーサルデザインの定義としてよく「誰にでも使える」という文言が使われますが、これこそが誤解の原因となっています。少し言いいすぎかもしれませんが、伝言ゲームをしているうちに言葉が変わって伝わったということでしょうか。。

ユニバーサルデザインの提唱者であるロン・メイスは、「できるだけ多くの人が」「可能な限り」という言葉を使っています。「誰もが」「すべての人が」という言葉は、「できるだけ多くの人が」という言葉が期待値を上げていくうちに「誰もが」に変わっていったのかもしれません。

バリアフリーは、言うまでもなく障害をいかに取り除くかという手段に言及します。それに対して、ユニバーサルデザインは可能な限り多様な人が使えるように、最大公約数のようなところを見いだそうとする考え方です。

最大公約数と言うからには、どうしてもその中に入れない人が出てしまいます。そうした人たちに対応しようとするとき、個別対応はどうしても必要になります。ユニバーサルデザインによって多くの人が利用できるように考え、いくつかの手段を採り入れても対応できないときに個人対応をするというように、ユニバーサルデザインはバリアフリーや個人対応と両立してこそ威力を発揮するのです。