株式会社ZMPが開発したパーソナルモビリティー「RoboCar Walk」の走行音、ZMPの企業サウンドロゴをデザインしました。2019年7月23日、ベルサール飯田橋ファーストで開かれた「ZMP World 2019」のなかで正式に発表されました。

1.経緯

2.自立型新モビリティー『RoboCar Walk』の走行音

3.ZMP企業サウンドロゴ

4.新モビリティー『Robocar Walk』の今後

1.経緯

ZMPの谷口社長さんとは、視覚障害者の自由な移動やユニバーサルデザインについてのシンポジウムなどで何度かお会いしたことがありました。意見交換のようなこともしたことがあり、Facebookでは繋がっていました。

2019年5月7日、谷口社長さんから新しいロボットを開発中なので意見を聞かせてほしいというメッセージが来ました。早速、Facebook上で連絡を取り合い、わざわざ我が家までご足労いただきました。

5月10日の夕方、1時間ほどでしたが社員と一緒に打合せのようなことになりました。その中で、新モビリティーについて説明をうかがい、走行音についての意見を求められました。

私なりの考えを話す中で、走行音のデザインを依頼され、そのために実際に新モビリティーの模型を見せていただくことになりました。土台は既存製品の自動モビリティーで、その車体の上に椅子などの形を発泡スチロールで作ってあるとのことでした。

5月16日、ZMP本社で新モビリティーの模型と原形となった宅配ロボット『CarriRo』を実際に見せていただきました。合わせて、日本と韓国で行った宅配ロボットの実証実験のビデオも見せていただけました。

6月中旬に新モビリティー走行音デザインのコンセプトを提出し、検討いただいた上で6月末日には納入という予定を固めました。同時に、ZMPのサウンドロゴも作ることになりました。

5月11日から私は急に風邪にかかってしまい、ZMP本社を訪問したときは実は最悪の体調でした。それでも打合せを急いだのには別の事情があり、そのことについては別の機会に書こうと思います。

2.自立型新モビリティー『RoboCar Walk』の走行音

走行音のデザインについて、私の作業手順を説明しようと思います。

最初に、ZMPから新モビリティーのコンセプトなどをメールで送っていただき、次のようにまとめました。


◆イメージ・キーワード

自立的に考える
周囲とコミュニケーション
移動を快適にしてくれるパートナー

これらのキーワードと自分なりに模型やビデオからくみ取ったイメージを合わせて、次のような連想ワードを引き出しました。


◆連想ワード

乗る人
有機体
安心
安全
包み込む形状
角のない

こうしたキーワードをまとめ上げる形式で、走行音のデザインコンセプトを決めました。


うるさく感じない音
機械を予想させない音
遠くまでは響かない、存在を主張しすぎない音
前方にいる人が避けられる距離で聞こえる音
→ 5m程度まで聞こえる音の大きさに設定

低音域・中音域の2音
音のイメージは残るがメロディーとは聞こえない
1秒以上で2秒未満の長さ
鳴っていても周囲環境と違和感を感じさせない
→ 風を連想させる笛のような音

コンセプトまではなんとか辿り着いたのですが、実際の音作りはかなり悩みました。「鳴っていても周囲環境と違和感を感じさせない」「うるさく感じない音」でも、「前方にいる人が避けられる距離で聞こえる音」と、主張しすぎなくとも気づいてもらわなければならない矛盾しそうな条件を満たさなければならないからです。

実際の音は2・3度の試行錯誤を経て、7月5日にようやく完成しました。音源ファイルをメールで送信し終わったときには、日付が変わっていました。

驚いたのは、7月23日の発表で、いきなりドラマ仕立てのビデオが公開されたことです。登壇して5分程度の説明をすることになっていたのですが、その前にプロモーションビデオが流れるとは知りませんでした。

Youtubeで公開されていますので、よろしければご覧ください。新モビリティー『Robocar Walk』の走行音とともに、ZMPのサウンドロゴも使っていただいています。

移動のパートナー『Robocar Walk』PV 【自動運転_モビリティ_ロボット】

3.ZMP企業サウンドロゴ

ZMPの企業サウンドロゴも、走行音のデザインとほぼ同じ手順で進めました。

Webサイトを閲覧しながら、キーワードを拾い上げていきました。


Robot of Everything
ロボットベンチャーの先駆者
ロボット専業会社
唯一無二の存在
楽しく便利なライフスタイルを創造する
先進的未来
始まる

連想ワードは、次のようになりました。


2・3秒以内
機械的・電子的には感じない
ファンファーレ

4.新モビリティー『Robocar Walk』の今後

『Robocar Walk』の走行音もZMPのサウンドロゴも、谷口社長さんからZMPの中で好評だという話をお聞きしました。

今後、Robocar Walk は具体的な導入と量産に向けて、詳細な走行実験や実証実験をしていくそうです。社会に出るのはこれからですが、多くの場所に受け入れていただいて愛用されるようになれば嬉しい限りです。

【参考】
ZMP、近距離用の1人乗り自動運転モビリティ「Robocar Walk」発表会。シートと音にこだわり 空港~都心の移動を快適にするバスと自動運転タクシーの連携も発表 – トラベル Watch

ZMP、1人乗り自動運転モビリティ『Robocar Walk』を発表—空港や商業施設での活用を想定 レスポンス(Response_jp)